からりのこだわり

からりのこだわり

日本の四季の恵みのすばらしさをお伝えしていきたい

笊(ざる)に盛った野菜や魚をご覧になったお客様から「綺麗ですね」とお褒めいただくことがあります。「うちの食材は生きていますから」とお答えするのですが、天麸羅にすると「生きている」ことが良く分かります。熱を加えると、パンッと張りが出る。衣の乗りが良く、薄衣にしっかり応えてくれる。そういったお話をするうちにお客様も食材に身を乗り出し、見てくださる。これまで産地の良さ、ものの良さは食べていただければ瞭然と思っておりましたが、日本の四季の恵みのすばらしさをお伝えすること、語ることで、大地と海への感謝が自ずと湧き上がるような気がする今日この頃です。

 

食材へのこだわり

基本は江戸前

江戸前といわせていただくからにはやはり豊洲市場直送が基本です。特に惚れ込んでいるのは羽田沖で獲れた穴子。皮が薄くてほくほくした身、嫌味のない上品な香りは「ふうふう」言いながらぜひ召し上がっていただきたい。まさに潤いが伝える旨さと言えましょう。さて、穴子に限らず、めごち、鱚など魚介類は豊洲市場で朝仕入れたものを空輸で運びます。開店直前の夕方6時に店に着くように。
もちろん素材が良ければ豊洲市場以外からも仕入れます。たとえば帆立は北海道、鹿児島ですと出水の外海で獲れる鱚。香り、脂の乗り、食べ心地、五感を駆使して納得した食材のみをお客様の舞台に。単衣を着せてあげて、更にもう一花咲かせる、それが天麸羅職人の冥利です。

海老はもちろん活きもの

才巻海老の甘みは10センチほどのものが最高です。揚げる直前まで生きているからこそ、衣は薄目に海老の繊細さを生かし切ります。ご一緒に召し上がっていただく脚の素揚げはぱりっとさくっと。云わば高級海老煎です。

 

鹿児島の青果市場には毎朝足を運びます。

季節によって産地も変わりますから、毎朝、野菜の顔を見て選びます。夏なら高知の小茄子。身質がしっかりしていてほろ苦い。冬に旬を迎えるのが銀杏や蓮根。

そして名脇役の大根。おろして、なお大根らしい爽やかさを持ち、辛すぎないもの。「からり」ではたっぷりお出ししますので、そのまま箸休めに召し上がる方も。天麸羅に寄り添う適度な甘みを求めて、鹿児島から夏場の北海道産まで順次北上します。

 

良質な胡麻油

揚げ油は厳選した胡麻油。芳ばしさと切れの良さの持続力。つまり「だれ」ない。さらりとした中に旨みが生きています。ごく軽く煎ったおだやかな香りの胡麻油を主にして衣一重の軽さを追及します。

 

実は、衣が最も難しい。日本の四季は気温湿度が大きく変化します。現代の空調した空間でも微妙な空気の変化に衣は敏感に変化します。特に梅雨時は衣と対話しながら、ベースは薄く。食材に薄くまとわせたら、またベースのさらり感が戻っているように、粉の足し算引き算をまめに繰り返します。粉自体にも味わいを求めて、下ごしらえで粉の粒子と空気と水分を調整します。

 

丼つゆVS天つゆ

天つゆは鹿児島産の鰹節でダシを取り、みりんと醤油のみで調味。フレッシュ感のあるつゆと天麸羅は出会いのもの。作り置きせず、その日の分ずつダシを取るところから始めます。対照的に天丼にかける通称「丼つゆ」は、開店当初から継ぎ足した年代もの。「これだけで一膳二膳いけるね」と言われるほど、ご飯とは好相性の味わい。天麸羅とご飯をコクのあるつゆで引き立てます。

 

〆の楽しみ ご飯もの

コースの〆は天丼、天茶漬、赤だしとご飯の3種類からお好みを選んでいただきます。阿蘇の伏流水で育まれる熊本県産米はさらりとした美味しさで天麸羅を引き立ててくれます。宍道湖で採れた大粒蜆(しじみ)はお酒の後のお楽しみ。

難しくも楽しいかき揚げ

かき揚げは職人技の見せどころ。個性が出ます。揚げ油の中で衣に熱が通る前に、深いところに落としてひっくり返します。途中、ある瞬間にパンっと膨らむ。玖珠玉のような上品な姿になり、それでいて食べ心地はさくっと。理想のもろさと見目麗しさがお楽しみいただけます。

天麸羅からり名物「天茶漬」

ご飯にかき揚げ、それに昆布で味を含めたお茶をかけて。一度召し上がったお客様は次も必ずと言って良いほど天茶漬をご所望されます。専門店ならではの口福と皆様におすすめしています。天盛りの山葵(わさび)は静岡産のLサイズをその都度おろし、海苔は有明産。巻き寿司に使う全形海苔を細く包丁し、はらりと香り添え。「次も食べたい」というご期待にお応えできるよう丁寧にお作りしています。